森に足を踏み入れると感じられる、緑の鮮やかさ、木々や土の香り、森に息づくいのちや力。人間のルーツを五感で感じられるような森の中は、癒しやリラックスを与えてくれる。このような森の持つ癒し効果は「森林浴」として親しまれてきたが、この効果を更にこころと身体の健康に活かそうとする試みが「森林セラピー」だ。
奥多摩町にはセラピーロードとして認定されているコースが5つほどあり、ユニークなセラピーツアーが定期的に開催されていることはあまり知られていない。町が実施する講習や検定を受け、セラピーアシスターとして資格を持つ森林セラピーガイドも26名ほどいる。自然・郷土史・医療等の知識を備え、バードウォッチングや登山、ヨガ、アロマの講師、鍼灸師など各個人のスキルを生かしたツアーもバラエティに富む。東京の水を育む奥多摩の森をもっと知り、楽しむ新しい提案だ。
「奥多摩駅」から徒歩約15分ほどのところにある「登計トレイル」も、そんなセラピーロードの一つ。ヒノキのチップが敷き詰められた、「香りの道」。コースのところどころに点在する、ユニークな設計の建造物。人間工学に基づいて設計されたという空を見るベンチや、森と対話するようなテーブルと椅子。「車椅子用モノレール」も完備されている。
とあるセラピーアシスターのツアーでは、ルーペを携帯し、歩きながら半径1メートルの自然を感じるというテーマ。ルーペで覗くミクロな世界の美しさに息をのむ。見て触って、歩いて感じる自然の不思議。奥多摩にしかない植物の数々。香りで見分ける樹木の種類。ロードの途中には、散策の疲れを癒す、アジトのような小屋が数軒あり、薪ストーブで暖まることもできる。
登計トレイルへ向かう前後には、エメラルドグリーンに輝く多摩川上流の氷川渓谷や、山の斜面に佇む登計集落などを横切る。そんな風景も、地元を感じるささやかな旅の瞬間。歩いて感じる奥多摩の新しい魅力がそこにある。
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